一家に1冊、いや、1人に1冊「人間失格」

通過儀礼のような本

太宰治の「人間失格」。誰でも一度は耳にしたことがあると思います。
少なくとも、自分のようなネガティブ人間には、ひどく刺さるタイトルです。余裕で知ってるよ、という方も多いかと思いますが、まず初めにこの1冊は出しておきたいと思い、紹介します。


私が初めて読んだのは高校生ごろだったと思います。母親が「すごく暗い話よ」と言っていたため、身構えて読んだのですが、読んだ感想は、、、

えっ、めっちゃわかる!!!

でした(笑)。これが完全に共感できちゃうって、自分ちょっとおかしいのか…?と。


その後数年して、就職した後、新潮文庫夏の100冊の特別カバーのデザインがどストライクで、購入しました。人間失格は毎年のようにオリジナルカバーになっていますので、購入前の方はぜひ気に入るデザインで購入してほしいです(私の印象だと、ほぼ毎年黒(笑))。

My人間失格。黒地に赤い文字がお気に入り

「人間失格」あらすじ

以下、あらすじです。

「恥の多い生涯を送って来ました」。そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。だれもが自分のことだと思わせられる、太宰治、捨て身の問題作。

太宰治「人間失格」新潮文庫、新潮社

「捨て身」って何?と思うのですが、太宰の来歴を見てみればその意味がわかります。

著者:太宰治の来歴

出身:青森県金木村(現:五所川原市金木町)
本名:津島修ニ
(太宰は青森出身のため、訛りが強く、本名だと「つすま すうじ」という発声になってしまうので、訛らないペンネームをつけたのだと国語の先生が言っていた)
1929年(20歳)自己の出身に悩んでカルモチン自殺を図る。
1930年(21歳)東京帝国大学仏文科に入学。同年、女性と心中を図る。女性のみ死亡。
1932年(23歳)非合法運動に従事したものの、自首し、一か月留置される。
1935年(25歳)都新聞社の入社試験に落ち、縊死を企てるも失敗。東大中退。その後盲腸炎などで入院した際に使用した麻薬の中毒になり、以後続くことになる。
1937年(27歳)女性と心中未遂。
1939年(30歳)結婚。
1948年(39歳)遺書を残し、女性と心中。死去。

3回心中しとるんかい。おまけに薬物中毒。
3回も心中してくれるほどって、よっぽどモテたってことなんでしょうか…
(映画「人間失格」(監督:蜷川実花)では、小栗旬が太宰治を演じていましたが…)
要は、ほぼノンフィクションということなのです。自叙伝に近い。だからこそ、一言一言が重いわけです。これが丸々創作だったら、こうはいかなかったろうと思います。

生きることの苦しさを身をもって経験してくれた人

以下、印象的なフレーズを抜粋。

互いにあざむき合って、しかもいずれも不思議に何の傷もつかず、あざむき合っている事にさえ気がついていないみたいな、実にあざやかな、それこそ清く明るくほがらかな不信の例が、人間の生活に充満しているように思われます。

太宰治「人間失格」新潮文庫、新潮社  P24

薄々感じてはいるものの、はっきり言葉や口に出してしまったが最後、身動きが取れなくなってしまうようなことを、太宰はズバリと言ってしまう。
世の中の欺瞞を、なんとなくで通り過ぎることのできない繊細さが感じられます。

さらに太宰はこう言います。

つまり、わからないのです。隣人の苦しみの性質、程度が、まるで見当つかないのです。

太宰治「人間失格」新潮文庫、新潮社  P13

「そんなこと言っちゃあおしまいよ…」

とは思うものの、自分だけがうまく周りに溶け込めていないと感じるときって、ありますよね~(^^;

この中では、主人公は、どうにか世間と自分を擦り合わせて生きようとするのに、うまくいかずに傷つき(大雑把な人からすると意味不明なことでも、この人は傷ついてしまうのです)、弱さをそのまま弱さとして持ち続けた結果、転落していきます。私のようなビビリからすると、家族に迷惑をかけるとか、体がボロボロになるとか、そういったことの方が怖くなってしまいますが、太宰はまるで弱い人の代わりにすべての転落を経験してくれているのではないかと思うほどの堕ち方です。

ただ、この話は実際の太宰治のように、心中で終わりではありません。生きづらく、自分を欺いてまで周囲となんとか付き合ってきたにもかかわらず、つらい出来事が多く起き、(多少自業自得な部分はあれど)打ちひしがれた主人公が最後にたどり着いた思いとは?これはご自身で読んでいただきたいです。
私はふと、最後のフレーズが頭に浮かんでくるときがあります。

また、今回のブログタイトルに書いたとおり、この本は一人1冊持つべきと思います。
なぜかというと、あまりにも自信の深く暗い部分を曝け出してしまうため、付箋などを貼ってしまうと人に見られたら相当恥ずかしいからです。また、何度も読み返したくなる小説ですので、そのたびに思い切り線を引いたりできるように、やはりMy人間失格をキープするのがよいです。
(新潮文庫なら、税込308円ですしね!安い!!)

こちらもオススメ

人間失格が気に入った人は、ぜひこちらも読んでほしい。

かの有名なホラー漫画家、伊藤潤二先生の描く人間失格。ビッグコミックス(小学館)全3巻です。
独自の解釈による創作部分があるため、「あれ?こんな話あったっけ?」と思うこともありますが、
「そういうことだったのかも!」と思いながら読むと、小説とはまた違った楽しみ方ができます。
ただ、怖いは怖いです笑。夜には読まないほうがいいかも笑。