岡本太郎先生からの熱い檄「自分の運命に楯を突け」

自分の運命に楯を突け

ネガティブ人間とはいえ、暗い本ばかり読んでいるわけではありません。
たまには、熱い、前向きな、勇気の出る言葉もほしくなるものです。

そんなときに出会ったのが、この本。確か、何か雑誌の読書案内などで紹介されていた気がする。

岡本太郎先生の存在は、もちろん知っていました。
大阪万博の太陽の塔ですとか、あのビビッドな、独特の作風(実は少し怖いと思っていた(^^;)。
そして、「芸術は、爆発だ!!!」という、あの名言ですよ。
ただ、それ以上のことをあまり存じ上げていなかったのが正直なところ。

岡本太郎 来歴

芸術家。1911年生まれ。29年に渡仏し、30年代のパリで抽象芸術やシュルレアリスム運動に参加。パリ大学でマルセル・モースに民族学を学び、ジョルジュ・バタイユらと活動をともにした。40年帰国。戦後日本で前衛芸術運動を展開し、問題作を次々と社会に送り出す。51年に縄文土器と遭遇し、翌年「縄文土器論」を発表。70年大阪万博で太陽の塔を制作し、国民的存在になる。96年没。いまも若い世代に大きな影響を与え続けている。

岡本太郎「自分の運命に楯を突け」青春文庫、青春出版社

恥ずかしながら、フランスに行かれていたことも存じ上げていませんでした。
バタイユ、モースなんて、教科書レベルの有名人と渡り合っていたのですね。

あらすじ

己れをつらぬけ、平気で闘え、自分のスジをまもれ、マイナスに賭けろ…。太郎は文章を通じて「どう生きるか」を公言し続けた。先が見えない現代だからこそ、その閉塞感をスパッと切り裂いてくれる太郎の言葉〈メッセージ〉は、時代を超えて私たちの魂を射ぬく。本書は、いまも読み継がれているベストセラー『自分の中に毒を持て』の姉妹本である。

岡本太郎「自分の運命に楯を突け」青春文庫、青春出版社

上記にあるように、こちらは「自分の中に毒を持て」の続巻ということです。
現在では、さらに3冊目として「自分の中に孤独を抱け」も出版されています。

情熱的な中にも冷静に観察する

姉妹本がいくつかあるなかで、私が特にこの本を購入するに至ったのは、最初にこのフレーズがあったからと思われます。

絶望だからおしまいなんじゃない。
そこからはじまるんだ

岡本太郎「自分の運命に楯を突け」青春文庫、青春出版社 P10

“絶望”??超絶ポジティブな印象でしたが、実に意外な言葉です。
この章で、岡本先生はこう言います。

人間の世界は絶望的だ。
でも、だからダメだと考えず、その絶望のなかに生きることこそがおもしろいと思って生きる以外にない。それがほんとうの生きがいになる。ただ悲しがっていたって仕方がないからね。

岡本太郎「自分の運命に楯を突け」青春文庫、青春出版社 P12

人間の世界は絶望的だと、言い切ってしまってます。
でも、その中でどう生きるかが大事だと。出発地点はまず絶望からスタートしているというのが、ネガティブ人間的には非常に刺さります。

さらに別の章で印象に残ったのは次の一節。

いまの社会では、会社のなかでもそうだけど、真実のことを言ったりしたりしたら、絶対に受け入れられないと思った方がいい。だから、いまの会社でずっと無難にやっていくつもりなら、自分を失くして会社のシステム、人間関係にあわせていく以外にない。現在の社会機構そのものが変革されないかぎり、これはどうすることもできないことだ。
それでも、もし生きがいをもって生きたいと思うなら、人に認められたいなんて思わないで、己れをつらぬくしかない。でなきゃ自分を賭けてやっていくことを見つけるのは不可能だ。

岡本太郎「自分の運命に楯を突け」青春文庫、青春出版社 P59‐60

えーっと、会社勤めしたことあるんですか?
と思ってしまうほど、本質を突かれた感じがします。
「これ、やる意味あります?」とか、「こんなの、おかしくないですか?」っていうのがタブーに感じられること、たくさんありますよね…
でもそんなのは気にするなと。認められようとするな、己の道を行けと。

私はこの本を読んで、岡本太郎のイメージがかなり変わりました。
爆発し続けてるわけではなく(そりゃそうだろ)、社会を冷静に観察し、本質を即座に理解したうえで、自分の芸術を作り上げることができたからこそ、巨匠たりえるのだろうなと思いました。

最後まで自分の道を貫いた岡本太郎先生の言葉は、力強くネガティブ人間の背中を押してくれます。
なお、岡本太郎の展覧会は定期的に開催されていますし、東京・青山に岡本太郎記念館、川崎市に岡本太郎美術館もありますので、いつか訪れてみたいと思っています。