戦争にゲーテの本を携えていったほどのゲーテ好き
ここ数年で、私の中のゲーテ熱が高まっています。
きっかけははっきりと思い出せないのですが、以前紹介した頭木弘樹さんがカフカとゲーテを対比した作品を書かれているということを知ってから、ファウストを読んだり、関連書籍を読んだりして、少しずつ魅力にとりつかれていったと思います。
そんななか、「ゲーテ」で検索をかけたときに出てきてたまげたのがこの本。
水木しげるといえば言わずと知れたゲゲゲの鬼太郎の作者で、妖怪漫画のパイオニア。
私は漫画家になりたいと思っていたくらい漫画家超リスペクト人間ですので、
「あの水木さんが、ゲーテが好きだった!?
さすがゲーテ!さすが水木しげる!
と思い、興奮しつつ購入しました。
著者:水木しげる 来歴
ここで述べるまでもないほどの有名人ですが、掲載します。
水木 しげる
1922年生まれ。鳥取県境港に育つ。太平洋戦争時、ラバウルに出征し左腕を失う。紙芝居画家、貸本漫画家を経て、少年誌にデビュー。代表作に『ゲゲゲの鬼太郎』『悪魔くん』『河童の三平』などがある。91年に紫綬褒章、03年に旭日小綬章を受章。07年に『のんのんばあとオレ』がフランス・アングレーム国際漫画祭で日本人初の最優秀作品賞を受賞。また、『総員玉砕せよ』がアングレーム国際漫画遺産賞、米・アイズナー賞最優秀アジア作品賞をそれぞれ受賞している。2008年度朝比賞、2010年度文化功労者顕彰を受ける。(2016年2月現在)
「ゲゲゲのゲーテ」水木しげる、双葉新書、双葉社
2010年度上半期のNHKの朝ドラで『ゲゲゲの女房』が取り上げられたことも記憶に新しい(と思ったらもう12年も前。。。(^^;)。残念ながら、2015年(平成27年)に惜しまれつつお亡くなりになりました…(涙)。この本の出版年が2016年2月29日ということですが、この本を作っている最中にお亡くなりになったということでしょうか。そのことを意識しながら読むと、水木先生からの、残された私たちへのメッセージのような気がします。
ゲーテ 来歴
ここで、やはりゲーテとはどういう人なのか、ということは述べておかないといけませんが、ちょっと調べただけでも色々やっている人なので、なかなか一言では言い表せないんですよね。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe、1749年8月28日 – 1832年3月22日)は、ドイツの詩人、劇作家、小説家、自然科学者(色彩論、形態学、生物学、地質学、自然哲学、汎神論)、政治家、法律家。ドイツを代表する文豪であり、小説『若きウェルテルの悩み』『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』、叙事詩『ヘルマンとドロテーア』、詩劇『ファウスト』など広い分野で重要な作品を残した。
Wikipediaより
肩書の多彩さが目を引きます。詩人・劇作家・小説家というのはわかりますが、自然科学者であり、政治家でもあったというのが異質です。
そもそも評議員のメンバーに選ばれたこと自体が異例で、しかも務めた仕事も、文化関係のみならず、道路工事主任、軍事顧問、財務顧問官と多岐に渡っているところをみると、政治家としても優秀な方だったのではないかと思います。なんでもできちゃう天才肌、レオナルド・ダ・ヴィンチのような人、という印象があります。人としてのバランス感覚もうかがえます。
この本の構成
表紙にもありますように、この本は水木しげるさんが選んだゲーテのことばと、それに対するコメントが中心です。ですが、それに加え、水木先生がゲーテについて語ったインタビュー、また、「ゲゲゲの女房」武良布枝さんとの対談も入った、ファン垂涎の一冊です。
また、基本的に話し言葉ですので、大変読みやすいです。
私の気に入ったことばをいくつか抜粋します。
(電子書籍で購入しているため、文字サイズによってページ数が変わってしまうので、ページ数は記載できませんが、なるべくどこに載っているかがわかるかたちで記載します。)
50【仕事を選ぶ基準】
「ゲゲゲのゲーテ」水木しげる、双葉新書、双葉社
有用な仕事に力を集中して、
君にとってなんの成果にもならぬこと、
君にふさわしくないようなことは、すべて放棄したまえ
割と忍耐を好む日本人には、結構響くのではないでしょうか。
無駄(と思える)ことは、我慢せず、やめていいんだと、ゲーテ先生は言います。
ただ、そこの判断は慎重にする必要がありそうですね。
52【眠るのが一番】
「ゲゲゲのゲーテ」水木しげる、双葉新書、双葉社
私がすすめたいのは、
けっして無理をしないことだ。
生産的でない日や時間にはいつでも、
むしろ雑談をするなり、
居眠りでもしていたほうがいいよ
「えっ、いいの?」
と思ってしまいます。こういう偉人って、常にエネルギッシュなイメージがありましたので、ちょっと驚きました。でも、ゲーテ先生がこう言ってくれると、なんだか安心します。
65【政治について】
「ゲゲゲのゲーテ」水木しげる、双葉新書、双葉社
政治というものもまた、
学ばなければならない職業の一つであり、
それを理解しないようなものが、
さし出がましいことをしてはいけないのだ
ここまで才能があると、「俺は作家先生だぞ!」と、その分野だけでも威張れそうな気もしますが、ゲーテ先生は、どんな立場であっても政治には興味を持つべきと語っています。地に足がついているというか、現実的で、こういうところが私は好きです。
有名人、著名人は数おれど、こういった晩年まで評価され続けた人、また、全方位的に分別のある人のことばというのは、とても含蓄があって、ためになります。
水木先生も愛読したゲーテ、まずここから触れてみてはいかがでしょうか。
ゲーテに興味を持った方は
ゲーテ自身に興味を持った方におすすめしたいのが、次の2点。
○「ゲーテさん、こんばんは」池内紀(著)、集英社文庫、集英社
ドイツ文学者である池内紀さんによる、ゲーテの評伝。テーマごとの小さな章に分かれていますので、非常に読みやすく、人間ゲーテの姿がよくわかる一冊です(著作権の関係で表紙が載せられなくて残念ですが、かわいい表紙です)
○「ゲーテとの対話(上・中・下)」エッカーマン(著)、岩波文庫、岩波書店
本作中で水木さんが引用したことばは、ほぼこの著作からのものになります。3冊の大作ではありますが、名言の連続、また、ゲーテがどんな日常を送っていたのかがよくわかり、持っていて絶対損はない3冊です。だって、水木先生が戦地に持って行ったくらいですよ!!!