わかりやすい文章、書けてますか? 岩淵悦太郎「悪文 伝わる文章の作法」

半世紀以上読み継がれるベストセラーが文庫になって手に取りやすく!

みなさんは、正しい文章を書けている自信、ありますか?
私は全然自信がありません。
私の場合、勢いで書くと冗長になる癖があるので、なるべく読み返すようにしています。

社会人ですと、職場で文章を書く機会もあるかと思いますが、小学生くらいならともかく、社会人ともなると、国語的な観点から指摘をしてくれる人って、なかなかいないですよね…
なので、文章の書き方について勉強したいと思っていたところ、こちらが当時新刊ということで平積みになっており、購入しました(ちなみに平成28年発売です)。

概要

不用意な語順、たった一文字の助詞のちがい、身勝手な句読点の打ち方によって、日本語は読み手に届かないばかりか、誤解や行き違いをひきおこしてしまう。
すらりと頭に入らない悪文の、わかりにくさの要因はどこにあるのか?
随筆、ニュース、論説、広告、翻訳文など、伝わらない文章の具体例をあげて徹底解剖。
悪文の撃退法を50の鉄則で示し、添削法を明かす。
伝わる作文の作法が身につく超ロングセラー、異色の文章読本!

「悪文」岩淵悦太郎 編著、角川ソフィア文庫、KADOKAWA

編著者 岩淵悦太郎 来歴

1905年、福島県生まれ。国語学者。30年、東京帝国大学文学部卒業。同大学助手を経て、大阪高等学校、第一高等学校、東京女子高等師範学校で教授を歴任したのち、国立国語研究所所長。国語学会代表理事、国語審議会委員として、当用漢字表の改革に貢献した。『現代の言葉 正しい言葉づかいと文章』(講談社)、『現代日本語 ことばの正しさとは何か』(筑摩書房)、『国語の心』(毎日新聞社)、「日本語 語源の楽しみ」シリーズ(グラフ社)など多数の著書があるほか、『岩波国語辞典』(岩波書店)の共編著者をつとめた。78年、没。

「悪文」岩淵悦太郎 編著、角川ソフィア文庫、KADOKAWA

目次

なお、この本は編著とありますように、章ごとに執筆者が異なります。

1 悪文のいろいろ(岩淵 悦太郎)
2 構想と段落(林 四郎)
3 文の切りつなぎ(宮地 裕)
4 文の途中での切り方(高橋 太郎)
5 文の筋を通す(野元 菊雄)
6 修飾の仕方(宮島 達夫)
7 言葉を選ぶ(水谷 静夫)
8 敬語の使い方(斎賀 秀夫)

1章が40~50ページ程度ですので、区切って読むと読みやすい分量です。
また、最後に「悪文をさけるための五十か条」が掲げてあり、索引としても使用でき便利です。

意外にも読みやすい

結構古い本ということで、内容は学術的なものであることも覚悟して購入しましたが、予想以上に読みやすかったです。

悪文の例を挙げ、それに対してどこがどうダメなのかを具体的に説明してくれるので、自分でもどこが変なのかを考えながら読むと理解が深まると思います。

個人的にうれしく感じたのは、法律関係の文章がわかりにくい、とバッサリ切り捨ててくれたこの部分。

(法律の条文を挙げたうえで)
しかしながら、この文は、法律文としては、別に変わった書き方ではないようである。
…(中略)…
しかしながら、これは、法律という専門の分野においてのみ言えることで、ふつうの現代日本語の文章として考えるならば、標準的でない。この文章からは、法律の専門家でない、ふつうの日本人に読みやすくしようという努力は感じられない。この文章は、日本語の文章として悪文であると言えよう。

「悪文」岩淵悦太郎 編著、角川ソフィア文庫、KADOKAWA P113

法律の条文って、ほんとどこで切れてるのか全然わからなくて、意味わかんないですよね…
自分の頭が悪いのかと思っていましたが、国語の先生からしてもわかりにくかったんですね(^^;
勇気が出ます。

また、ツボにはまったのは、7章目の「言葉を選ぶ」
他の章もそうですが、この章は特に悪文に対する著者のツッコミがいいんです。

マロニエのなみ木ならんでいます。

並んでいない並み木がありますかと言いたくなる。

「悪文」岩淵悦太郎 編著、角川ソフィア文庫、KADOKAWA P211

新郎新婦の入場を盛大な拍手で迎えたいと思います

私がヘソ曲がりなのか、「それなら、思うやつだけ拍手しろ」という気になる。

「悪文」岩淵悦太郎 編著、角川ソフィア文庫、KADOKAWA P213

めっちゃおもしろくないですか笑?多分毒舌な人なんだろうなと思いました。
この章をお書きになったのは水谷先生も、編著者の岩淵先生と同じく東京大学出身の国語学者なのですね。

正しい言葉遣いは一生モノ!この本で学びなおし!

全体的に読み通してみて、一応国語の塾講師バイトをしていたこともあり、おおよそは意識しているかな、と思いましたが、最近意識から抜けていたな、と思うことや、思わぬ着眼点もあり、大変勉強になりました。これからも時々読み返したい一冊です。

ご自身の文章に自信のある方もない方も、こちらを読むことで自分の文章をブラッシュアップできると思います。おすすめです。