この本を読んだきっかけ
私はこのブログのタイトルにもありますように、非常にネガティブで日々生きるのがつらいと思っていますので、常に暗い本を求めてしまうところがあるのですが、本の検索サイトで色々と検索していたところたまたまヒットしたのがこちら。
タイトルがすごすぎませんか。衝撃でした。(出版するにあたっては物議を醸しそう…笑)
しかし私にとってはドストライク!家人には引かれましたが、迷わず購入しました。
概要
ホフマン、ボードレール、マラルメ、ニーチェ、ハイデガー、バタイユ、藤原定家、上田秋成、波多野精一、九鬼周造、塚本邦雄、三島由紀夫……。
「死にたいのに死ねないので本を読む 絶望するあなたのための読書案内」吉田隼人、草思社
十六歳で自殺未遂を犯してから、文学書、思想書は、著者にとって唯一の心の拠り所であった。
角川短歌賞・現代歌人協会賞受賞の歌人・研究者が、古今東西の名著のエッセンスを、読書時の記憶を回想するとともに紹介する。
吉田隼人さん 来歴
1989年、福島県生まれ。県立福島高校を経て2012年に早稲田大学文化構想学部表象・メディア論系卒業。早稲田大学大学院文学研究科フランス語フランス文学コースに進み、2014年に修士課程修了、2020年に博士後期課程単位取得退学。高校時代より作歌を始め、2013年に第59回角川短歌賞、2016年に第60回現代歌人協会賞をそれぞれ受賞。著書に歌集『忘却のための試論』(書肆侃侃房、2015年刊)。
「死にたいのに死ねないので本を読む 絶望するあなたのための読書案内」吉田隼人、草思社
まさかの同い年でした!シンパシーを感じずにはいられない。ていうか平成元年生まれは大丈夫なのだろうか(^^;?
本業は短歌の歌人さんということで、2023年1月に2冊目の歌集である「霊体の蝶」が出版されたばかりです。
紹介されている主な作品
内容は大きく2部に分かれており、それぞれ12章と13章の短い章に分かれています。
それぞれの章あたり1つ、主軸となる作品が掲げられており、吉田さんのこれまでの歩みと共に語られています。作品は次のとおり。
【一部】
・『パリの憂鬱』ボードレール
・『エチカ』スピノザ
・『存在と時間』ハイデガー
・『物質と記憶』ベルクソン
・『雨月物語』上田秋成
・『アクアリウムの夜』稲生平太郎
・『砂男』ホフマン
・『形而上学叙説』ライプニッツ
・『文学と悪』バタイユ
・『省察』デカルト
・『美しいアナベル・リイ』大江健三郎
・『二人であることの病い』ラカン
【第二部】
・『マラルメ詩集』マラルメ
・『思想のドラマトゥルギー』林達夫
・『喜ばしき知恵』ニーチェ
・『渡辺一夫敗戦日記』渡辺一夫
・『闇屋になりそこねた哲学者』木田元
・『定家百首』藤原定家
・『時と永遠』波多野精一
・『岬にての物語』三島由紀夫
・『内的体験』バタイユ
・『異端の肖像』澁澤龍彦
・『夏の花』原民喜
・『「いき」の構造』九鬼周造
・『さよならを教えて』CRAFTWORK(18禁ゲーム)
感想
①とにかく豊富な読書量・知識量・研究者肌に驚き
先にも書きました通り、吉田さんは平成元年生まれですので、まだまだお若いです。ですが、この本を読み進めて、とにかくびっくりしたのがその読書量。上記で挙げた本はあくまで主題となる作品に過ぎず、1章の中にかなりたくさんの作品が出てきます。自身のご専門のフランス文学関係のみならず、哲学科の私ですら読めなかったような哲学書やら、他の分野の本が縦横無尽にバンバン出てきます。やはり博士課程まで行かれる方は違う。一時期修士課程に行きたいと思っていた自分が恥ずかしくなりました。
大変な量の人物名、著作名が出てきますので、どなたでも1冊は気になる本が見つかると思いますので、大変お得な本だと思います。
あと、さすが研究者といいましょうか、気になった部分はとことん原著や関連書籍にあたり、自分なりの分析をしっかりと出されています。現在は歌人ということですが、相当な研究者肌と感じましたので、どこかの大学教授などになっていただきたい気がします。
②暗さを貫く強さがある
この本は、「絶望」という切り口で本を紹介するという点では、依然このブログで紹介した「絶望名言」と似た印象があります。
ですが、私の感覚からしますと、今回紹介する「死にたいのに死ねないので本を読む」の方が暗いです。
「絶望名言」については、まず正しく生きたいという思いがあって、それが打ち破られた悲しみ、という印象で、人間的で共感しやすいです。そのため、読んだ後に元気が湧いてくる感覚があります。
ですが、こちらの方は、扱っているテーマも頽廃的であったり、エロ方面があったり、狂気性があったりと、読後感はいいとは言えないものが多いです。最後18禁のゲームですからね。攻めてる!
ですが、ここまで暗い方面に振り切ることができるのは、吉田さん自身の感受性の強さ、思いの強さだと思います。中途半端な人間ではもっと日和って穏便にすませてしまうところですので、ここまで書いてくれる本というのは非常に貴重であると思いますし、私のようにこの本を求めてやまない読者が必ずいます。どこまでもダークに落ち込みたい方はオススメです。
③今後の活躍に大期待
私はこの作品に偶然にも出会うことができて、非常にうれしかったです。
同年代で、ここまで同じ方面に興味を持っていて、生きることにつらさを感じつつも、救いを求めて本を読んでいる方がいたということが。
今色々と暗い世の中ですので、気分が落ち込むことも多いと思います。そのような中で、特に将来がまだまだあるはずの若者がこういった本を著すということの価値は大きいと思いますし、つらい経験と共に吐き出してくださってありがとう、という気持ちです。今後どんな作品を世に出してくださるか楽しみです!!