この本を読んだきっかけ
こちらの本を読んだ理由、それはズバリメンタルが弱っていたところに刺さりまくるタイトルだったからです(^^;
普段からメンタルが弱々で、落ち込むことが多いので、勢いで買ってしまいました。
佐藤優さんのことも元々存じ上げていて、いくつか著作も読んだことがあったことから、内容としては間違いないだろう、という気持ちもありました。
概要
いまの世の中、ふつうの精神では心が折れてしまう。 あなたの心を守る仕組みが必要だ!
外務省、特捜検察……巨大組織に屈せず、心を守り抜いた佐藤優氏が語るメンタルの強化術。著者によると、ここ最近、講演会や勉強会の後で“メンタル面の不調”について相談されることが飛躍的に増えたといいます。その背景には、日本社会が急速に新自由主義化しているために、ビジネスパーソンが常に競争圧力にさらされていることがあります。新自由主義を推進すると弱肉強食の社会になり、格差が拡大。一旦、転落してしまうと、そこから這い上がることはほぼ不可能になります。結果、メンタル面で苦しむ人が増えるというのです。
メンタルの強化書 | 株式会社クロスメディア・パブリッシング (cm-publishing.co.jp) より
こうした弱肉強食の社会において、競争に耐え、勝ち残ることができるのは一握りの人だけ。彼らは、他人を蹴落としてでも自分は生き残ってみせるという、良く言えばメンタルの強い人、悪く言えば自分勝手で図々しい──言い換えると“下品”な人たちである、と佐藤氏は言います。大半の、繊細で優しい心を持った普通の人たちは、競争の中でいつか心が折れてしまうだろう、と言うのです。
どんなに必死に頑張って働いても、会社に貢献しても、自分の「心」=「メンタル」が
壊れてしまったら元も子もありません。ではこれから先、私たちはどのように働き、
どのようにして心を守ればいいのか。下品になってでも戦い続けるのか、品格を保ちながら別の戦い方を探すのか。
これからの時代を折れずに、負けずに、疲弊せずに生き抜くための働き方を提案します。
著者 佐藤優さん 来歴
佐藤優(さとう・まさる)
「メンタルの強化書」佐藤優、クロスメディア・パブリッシング
1960年東京都生まれ。作家。元外務省主任分析官。同志社大学神学部卒業。同大大学院神学研究科修了後、85年外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。北方領土問題など対ロシア外交で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。09年、最高裁上告棄却。13年、執行猶予期間を満了し刑の言い渡しが効力を失う。同志社大学神学部客員教授、同大学特別顧問、名桜大学客員教授。著書に『国家の罠』(毎日出版文化賞特別賞)、『自壊する帝国』(大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞)など多数。
上にもありますように、佐藤さんは国家公務員だった際に逮捕されており、大変な修羅場をくぐっているということで、国家という権力の怖さのようなものを身に染みて理解されていると思いますので、発する言葉に重みがあります。
あと、個人的にすごく気になるのが、佐藤さんは神学部卒というところ。私は特定の宗教の信者ではありませんが、学問的に宗教に非常に興味がありますし、宗教はある意味哲学的な部分もありますので、哲学科を出ている自分としてはとても親近感の湧くバックグラウンドです。
感想
感想①読みやすさと学びのバランスがいい
この本は223ページありますが、本のサイズ自体が小さいこと、字が大きめであること、章が非常に細かく分かれていることから、非常に読みやすく、飽きずに読み切ることができます。
ですが、内容はしっかりと濃く、「なるほど!」と思わさせられる内容が満載です。
私はまたしても付箋だらけにして読みました笑。
なるほどと思ったのは、たとえばこの箇所。
厳しい時代は、自分だけが何とか助かりたいと生活防衛に躍起になり、個々人がバラバラになってしまいがちです。自助も必要ですが、それだけに固執してしまうと弱くなってしまう。
「メンタルの強化書」佐藤優、クロスメディア・パブリッシング、p56~57
そうではなく、みんなで力を合わせる。隣にいる人は競争相手ではなく、協力し合う仲間なのだと考える。
ドキッとさせられる人も多いのではないでしょうか。
これだけ厳しい状況の世の中ですと、とにかく「自分が勝ち組であればいい」とは言わずとも、無事なところにいられればよい、といったような気持ちになってしまいがちですが、多くの人が苦しい状況は、決して安全ではありません。現に今貧困にあえぐ人たちによる強盗などが増えているように思います。自分だけが逃げ切れればよい、と思うのではなく、世の中全体が安心して暮らせるようになるにはどうしたらよいのか、という視点を持つべきなのだとあらためて感じました。
感想②国家公務員だったからこその深い読み
国家側の人間からしてみたら、佐藤さんは相当に目の上のたんこぶなのではないかと思ってしまうくらい、佐藤さんは国家側の思惑をズバズバと書いてしまいます(^^;
たとえば、この箇所。
賃金引き上げは労働者にとっては一見歓迎すべきことに見えますが、じつは真の狙いは競争力が低く、労働生産性の低い中小企業の淘汰であると見ています。まさに先ほど触れた昭和恐慌直前、競争力の低い中小企業を戦略的に潰したのと似ています。
「メンタルの強化書」佐藤優、クロスメディア・パブリッシング、p126
そんな見方があったのか!と思いました。
実際国がそのように考えてやっているかどうかはわかりませんが、そういう角度からの視点も必要なのかもしれません。国=議員、官僚というのは、一般市民とはかなり違う立場にいますから、中小企業がつぶれても自分たちの腹は痛まないため、そのように考える「可能性」もあるかもしれません。
自分はお人よしなのでそこまで考えていませんでしたが、何か裏があるのかも、という意識は身を守るためには必要なのだと思わさせられました。
感想③啓発本を読む最大の目的、やる気が湧いてくる
こういった類の啓発本に求めることは、やはり「仕事に対するやる気を出すこと」だと思いますが、私はしっかりとやる気をいただくことができました。
この本は、「そもそも今の時代はまともな人は心を病んで当然」という前提からスタートしてくれるので、弱い自分がおかしいのないと、救われた気持ちになります。
内容としても、非常にさまざまな角度からメンタル強化についてアプローチしてくれているので、どんな人でも何か1つは得られる知識や考え方があると思います。
個人的には、最後に九鬼周三の「「いき」の構造」が出てきたところがびっくりしました。日本人の心の最も美しい部分に立ち返ろう、というのが、それまでの現実に立脚したシビアな議論からは意外な感じがしたと同時に、その方向について勉強してきた私にとってはありがたく感じられました。
余談:ぽんちゃんぽん的啓発本の選び方
ここで、余談ではありますが、社会人になって10数年、啓発本を色々と読んできて色々とミスマッチも繰り返してきた私なりの、啓発本との付き合い方についてご参考までに3点挙げます。
①啓発本ばかり読まないこと
啓発本というのは読むとなんだかやる気が出てきて、仕事ができようになったような気がします。それはそれでよいことなのですが、気持ちを上げる本ばかり読んでも、意外と知識がついていないことが多い気がしています。啓発本は読みやすいことも多いので、冊数も読めますし、「こんなに読んだ!」と満足感も得やすいのですが、知識を得られる専門書等もはさみつつ、バランスを取る必要があると思います。
②読む目的に合った著者であるかを確認すること
啓発本を読むときには、それぞれその本から得たいものがあって読むと思います。
それを明確にし、それに合った知見を提供してくれる筆者であるかを吟味すべきだと思います。
たとえば、今回私がこの本を読んだのは、「メンタルを強化したい」からでした。私はメンタルがやられる状況というのは人間関係や社会情勢だったりすると思いますので、実際に大きな組織で精神的に追い込まれたことがあり、かつ国全体の情勢も併せて考えを持っていらっしゃる佐藤さんはうってつけの筆者でした。
これが宗教家であったり、心理学系の方でも、人によってはよいのかもしれませんが、私は大組織の一員として苦労した経験がないと、自分の気持ちは真には理解してもらえないという気持ちがあったため(ひねくれてる)、物によって筆者は選んでいます。その方がミスマッチも少なくなるように思います。
③出版時期を確認すること
これもミスマッチを防ぐために必要な視点だと思っているのですが、読む目的によって出版時期もよく見た方がよい、ということです。
いつの時代も変わらなさそうな内容を学びたいのであれば、いわゆる古典の名著を読むのが良いと思いますが、今回のように「メンタル」という点で言いますと、社会情勢が大きく影響していると考えられるため、直近の情勢を反映したものでないと、今の自分にそのまま当てはめることが難しいと思います。この本は2020年初版発行で、数年経過してはいますが、それほど現状と乖離していないだろうと思い、購入しました。
随分前からのベストセラーのビジネス本というのもいくつか存在しますが、10年くらい前ともなりますと、物によってはそのまま受け取ることが難しいものもあります。少しずつ改訂しているものもあるので、そうであればよいと思いますが、いずれにせよ時流にあったものである必要あるのかどうか、という視点で本を選ぶことは大事かな、と思います。
啓発本は心の栄養ドリンク
色々書きましたが、啓発本というのは、日々折れそうな心を立て直してくれる存在です。
私は最近相当落ち込んでいましたので、この本を読むことでとても元気づけられました。
精神的につらい方へ、ぜひぜひおすすめです!