この本を読んだきっかけ
朝井リョウさんの存在は、脅威だ。
というのも、私も平成元年生まれで、完全なるタメだからです。1歳でも年が違えば色々と言い訳できますが(何をだよ)、同い年でここまで才能がある人を目の当たりにすると、いかに自分がショボイ人間かということを突きつけられるような気がするので、作品を読むのに変な抵抗感があります(自意識過剰)。
ですが、最近おもしろいエッセイを探していたところ、朝井リョウさんのエッセイが笑えるということで、同世代なら感覚も近いので、より楽しめそう!ということもあり、ここは抵抗を捨てて購入しました。
概要
就活生の群像『何者』で戦後最年少の直木賞受賞者となった著者。この初エッセイ集では、天与の観察眼を駆使し、上京の日々、バイト、夏休み、就活そして社会人生活について綴る。「ゆとり世代」が「ゆとり世代」を見た、切なさとおかしみが炸裂する23編。『学生時代にやらなくてもいい20のこと』改題。”圧倒的に無意味な読書体験”があなたを待っている!?
「時をかけるゆとり」朝井リョウ、文春文庫、文藝春秋
著者 朝井リョウさん 来歴
珍しく、タイトルが著者(自己)紹介となっていました。ご自身で書かれたということですね。
1989(平成元)年、岐阜県出身。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年「桐島、部活やめるってよ」で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。お腹が弱い。10年『チア男子!!』でスポーツ小説ならではの大人数の書き分けに失敗。13年『何者』で第148回直木賞を受賞し、一瞬で調子に乗る。14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞するが、「イイ話書いてイイ人ぶってんじゃねえ」と糾弾される。春服と秋服が全く同じ。物持ちがいい。バカ舌。
「時をかけるゆとり」朝井リョウ、文春文庫、文藝春秋
さっそくすごい自虐が笑。
私が購入した本には普通のカバーの他に特別カバーまでかかっていて著者来歴が隠れてしまっていたので、このブログを書くにあたりめくってちゃんと見たところ、のっけからすごいパンチの効いた自己紹介でウケました笑。
感想
感想①朝井リョウさんって意外と自虐なんだなぁ
しょっぱなから驚いたのが、朝井さんがお腹が弱いという話。勝手に完璧な人のイメージを持っていたので、急に親近感が湧きました。他にも痔の話や、自分の失敗談、自分で自分の顔を「馬顔」(どちらかというといい顔だと思いますが、ご本人は謙虚です)と言ってしまうなど、自らを貶めていくスタイル。
この感じ、同世代的にはすごくよくわかります。
調子に乗ったが最後、「ウザい」「さむい」と言われてしまうことを常に警戒して生きているところが私にもあります。できる限り笑われるピエロであることが、世の中を渡っていくのに必須のスキルであることを、自然と身につけてしまっている。ネット文化の影響なのでしょうか。以前紹介したダウンタウンの松本さんのエッセイのドヤ感とは世代の違いを感じます。
あとは、就活をして一般企業に就職していた、というのも知りませんでした。てっきり作家一本だと思っていたので…意外でした!
感想②結構大学生らしいことをしていて羨ましい
この作品では、主に朝井さんが大学生の時のエピソードが収録されています。
ご本人としては非リアをアピールしていますが、友人と東京から京都まで自転車の旅、離島の花火大会を見るための船旅、大学のクラスで作った映像の話、カットモデルをした話、友達とリアル脱出ゲームに行った話…と、大学生らしい青春をほとんど経験してこなかった私にはとても眩しいエピソード満載で、なんだか悲しくなりました笑。でも、多分これが一般的な大学生なのでしょう。
朝井さんと同じ早稲田生の方は、特に面白く読めるのではないかと思いました。
感想③率直に笑える!
原題が「学生時代にやらなくてもいい20のこと」ということで、基本的に失敗談や珍事の話になっています。が、これがやはり筆力のすごさ。テンション、比喩、セリフと情景のバランスなど、色々な技術が相まってすごく笑えます。
ただ、そこに成功者としての余裕を感じ取ってしまうのは私だけでしょうか、、、笑
どこか自分を下げることで「侮らせる」ことに成功しているような気がしました。
同世代として応援し続けたい
最初に朝井リョウさんは脅威、と書きました。ですが、やはり同世代の人間としては、同じ年代の空気感を文体に落とし込める書き手というのは非常にありがたい存在です。彼・彼女達は同世代の人達の代弁者とも言えるからです。
たとえば、以前ここでも紹介した「人類滅亡計画」は、もとはといえば朝井さんが雑誌で紹介していたのを見て知りました。私も以前から反出生主義に興味があったため、やはりそういう話題に親和性がある世代なのかも、と感じました。
色々書きましたが、これからも応援し続けたいですし、このエッセイには続巻もあるということなので、そちらもぜひ読んでみたいと思います!