この本を読んだきっかけ
“墓マイラー”という言葉をご存じでしょうか。
読んで字の如く、「お墓参りをする人」のことです。
私は結構前からこの言葉を知っていました。というのも、所さんの「笑ってコラえて!」で、“墓マイラー”という言葉を作ったカジポン・マルコ・残月さん(日本人の方です。ペンネームです)の特集があり、泣くほど感動してしまったひとりだからです。
カジポンさんの著名人への溢れるリスペクト・愛情がとても誠実で、私も影響を受けて墓参りを時々するようになりました。
そんななか、最近キング牧師に興味を持ち出し(唐突)、キング牧師の本を検索していたところ、偶然ヒットしたのがこちら。おそらくキング牧師のお墓が載っていたからなのだと思いますが、「これはカジポンさんが絡んでいるに違いない!」と概要を見たところストライク!こんな素晴らしい本が半年も前に出ていたとは、墓マイラー失格です。飛びつくように購入。
概要
この本には、偉人のお墓や、霊廟等建築物など、ありとあらゆる194の墓を、お墓のミニ知識と共に、豊富な写真で紹介してあります。内容は次のようになっています。
●巻頭特集
・「 墓マイラー 」の名付け親 カジボン・マルコ・残月 さんに聞く「私が墓巡礼を続ける理由」
・国によって違う埋葬方法
・墓から見た世界 「世界のすごい墓」早わかり年表
・墓参り、参拝で気をつけたいマナー
●スケールに圧倒される世界のすごい墓
●各国のお墓(ヨーロッパ、南北アメリカ、中近東・アフリカ、アジア/オセアニア、日本)
その他、「心に響く墓碑銘の言葉」などのミニコラム付き。
この本のよいところ
よいところ①見ているだけで楽しい豊富な写真
さすが旅行誌のパイオニアである「地球の歩き方」編集室!個人のお墓だけでなく、墓所の写真の豊富さがすばらしい。モスクの写真などは目がくらむような美しさで、眺めているだけでも楽しいです。
偉人のお墓は、その人の功績を表したモニュメントになっていたり、その人を表す言葉などが刻まれていたりして、インパクト抜群です。墓所にもお国柄というか、地域による特徴があって楽しいです。
よいところ②歴史上の人物の勉強にもなる
墓所の説明と共に、個人のお墓についてはその人がどんな人生を送ったのかについての要約が載っているので、「こんな人がいたのか~!」とさりげなく知識もついてしまいます。
あと、意外と母国でないところにお墓がある人がいて、それも結構面白かったです。
個人的には藤田嗣治さんのお墓がフランスにあるというのが驚きでした。よほどフランスがお好きだったのですね!
よいところ③自分の生き方を見つめなおすきっかけにも
観光ガイドとしてもとても優秀なガイドブックですが、こうやって偉人のお墓を見ていると、「自分のお墓はどんなのがいいかな…」と、超凡人にも関わらず妄想が膨らみます。自分はここに載るほどの功績を残せるとは思いませんが、少しでも何かを成した人生でありたい、という気持ちになります。
歴史上の偉人に思いを馳せつつ、自身の生き方を見つめなおしてみるのはいかがでしょうか。
個人的に気になったお墓3選
①キング牧師の墓
やはり最初のお目当てだっただけあって、すごくいいなと思いました。
というのも、墓石が奥様と同じ墓石で、お二人の名前が隣同士仲良く刻まれています。
特にすばらしいのは、その墓碑銘の言葉!
“Free at last,Free at last,Thank God Almighty I’m Free at last.”
「ついに自由だ。全能の神よ、私は自由だ、ついに!」
黒人の人権を守るための活動中、39歳の若さで暗殺されたキング牧師。志半ばでもあったとは思いますが、死をもって真の自由に達したのだという言葉は感動的です。
②チャイコフスキーの墓
チャイコフスキーはもともと大好きな作曲家でもあるのですが、驚きなのがその見た目!
チャイコフスキーの胸像の周りに、天使2体が寄り添っています。さらに、広めのスペースの周りには装飾付きの柵まであり、荘厳かつ如何に生前の功績が大きかったかが一目でわかる豪華さ。
ここまで立派なお墓を立ててもらえて、チャイコフスキーさんは幸せな人だなあと思いました。
③レオナルド・ダ・ヴィンチの墓
意外だったのがレオナルド・ダ・ヴィンチの墓。
イタリアの地域出身ですが、お墓はフランスのお城の敷地内にある礼拝堂内にありました。
しかも、礼拝堂内なので当然と言えば当然ですが、床に名前だけが刻まれている、功績に比して随分シンプルな見た目のお墓でした。
ただ、シンプルさがかえって究極さというか、威厳を感じさせる佇まいで、とても魅力を感じました。本当にすごい人は、亡くなってもなお、名前だけでオーラがあるものなのかも。
偉人のお墓参りという新しい旅のかたち
私は初めて「墓マイラー」という言葉を聞いたとき、「これだ!」という感覚がありました。
それまで私は心のどこかで、あんまりお墓を興味本位で訪れてはいけないのではないか、と感じていましたが、きちんと礼儀を持って、敬虔な態度であれば訪れてよいのだ、と言ってもらえた気がしたからです。
スタンプラリー的に回るのではなく、本当に自分が好きで尊敬している偉人のお墓を訪ねるというのは、自分の内側を見つめるとてもよい機会のように感じます。みなさんもこの本を読んで、訪れたいお墓を探してみてほしいと思います。
この本には載っていなかったのですが、個人的にとても好きなのが鎌倉の東慶寺。西田幾多郎や鈴木大拙、小林秀雄のお墓があり、緑に囲まれたとても静謐な空間で、「自分も死んだらここに眠りたい…」と思ったりしています笑。
(ただし、2023年10月現在、境内は撮影禁止となっていますので訪れる際はお気を付けください)