「他力本願」の正しい意味、わかりますか? ひろさちや「すらすら読める歎異抄」

待望の文庫化に歓喜!

“歎異抄”って、どういう本か、皆さんご存じですか?
私は高校の古文の授業で、和歌集などと一緒に名前を暗記させられた記憶がありますが、内容はほとんど理解していませんでした…

ですが、大学で仏教関係を勉強することになったときに、あらためて名前を聞き、興味が湧いたのでこちらを購入しました。とっっってもわかりやすかったので、ぜひこのブログでも紹介したい!と思っていたのですが、単行本はもう入手不可だったため、入手できない本をご紹介するのはなぁ、と思っていたところ、まさかのタイミングで文庫化されましたー!!

※私の手元にあるのは単行本バージョンであるため、もし内容が少々改訂等されていたらごめんなさい

概要

わたしたちは憤るべきです。
『歎異抄』は、親鸞聖人の没後に、その教えが歪められ、曲解され、親鸞聖人の教えとは異なったものになっている現状を歎いてつくられた書物です。では、「歎く」というのは、どのような行為でしょうか。辞書によりますと、”歎く”は「深く悲しむ」とありました。ところが、ある辞書には、「悲しくいきどおる」という意味が出ていました。それを見て、わたしは気づきました。われわれは悲しむだけでは駄目なんだ。『歎異抄』を読むことは、憤ることなんだ、と。ーーひろさちや

「すらすら読める歎異抄」ひろさちや、講談社

上記のとおり、「歎異抄」とは、浄土真宗の始祖である親鸞の教えの正しい(と思われる)解釈について、弟子の唯円が書き記した書物です。

構成

私の所有している単行本バージョンでは、全190ページのうち、110ページほどが本文(上段に古文がそのまま(フリガナつきです)、下段に現代語訳がついています)で、残りがひろさちや先生による解説になっています。解説がかなりしっかりした量ついているのが嬉しい。
古文の字も大きめ、しかもすべて現代語訳つきですので、本当に「すらすら」読めてしまいます!古文が読めなくても大丈夫です!

ひろさちや 来歴

1936年大阪市生まれ。東京大学文学部印度哲学科卒、同大大学院博士課程修了。気象大学校教授を経て、大正大学客員教授、宗教文化研究所所長。『仏教の歴史』(全10巻)をはじめ、『仏教と神道』『日常語からわかる仏教入門』『仏教が教える人生を楽しむ話』『なぜ人間には宗教が必要なのか』『ポケット般若心経』など多数の宗教啓蒙書や人生論で幅広く活躍した。2022年4月死去。

「すらすら読める歎異抄」ひろさちや、講談社

お名前は「ひろ さちや」と“ひろ”と“さちや”の間にスペースが入ります。ペンネームです。
昨年お亡くなりになっていたとは…惜しい方を亡くしました。

こういった宗教書を手に取るときって、やはり「宗教」というのがネックになって、「なんか怪しい本なのではないか?」「この作者、ちゃんとしてる人なのか?」と、購入をためらってしまいません汗?実は私もそのクチです。

ですが、この本は他の「すらすら読める」シリーズのひとつであり、それぞれ第一線の方を解説者に迎えていますし、ひろさちや先生はかなりの量の親しみやすい作品を世に送り出していますので、偏った思想の方ではないと思います。安心して購入してください笑。

よいと感じる点

①本当にわかりにくい親鸞の教えについて、わかりやすく解説している

親鸞の浄土真宗は相当に有名で、日本人の約半数が浄土真宗と言われるほどです。「南無阿弥陀仏」と一心にお念仏を唱えれば救われるという、非常にわかりやすい教えが民衆の心を掴みました。
ですが、信者や弟子が増えることで、色々な解釈が出てきてしまい、流派が分かれまくってしまったのです。

そこで、「先生の教えが間違って伝わってしまっている!」と嘆いて(歎いて)弟子が書いたのがこちらというわけです。

大学時代わりと親鸞の授業を受けていた立場からしますと、親鸞さんは確かにわかりにくい教祖様です。
なんていうか、誤読を誘発するような言い方するんですよ。回りくどいというか。
とーっても深いことを言っているのですが、表面的に捉えてしまうと真逆の意味になってしまったりしますが、そこはさすがのひろ先生、要点をシッカリ解説してくれています!

②原文を大事にした構成

上でも書きましたが、こちらは、原文が上段にかなり大きめに書いてあり、その真下に現代語訳が配置されていますので、原文と訳の対応する箇所がわかりやすく、行き来がしやすいため、より理解の助けになります。
現代語訳つきの古文の本は色々ありますが、ある章について、古文全文→現代語訳全文というかたちで書いてあるものが多いような気がしています。そうなりますと、ついつい現代語訳だけサーッと読んでわかった気になってしまうのですが、こちらは上下に配置してありますので、自然と原文が目に入ってきます。

なかなか古文でそのまま読解するのは難しいと思いますが、まず現代語訳を全部読んで、後から古文と一緒により深く味わう、ということもこの本なら可能だと思います。

③最後の一節、泣けます

すみません、歎異抄の直接の内容ではないのですが、私がとにかくこの本がいいと思ったのは、ひろさちや先生の解説の結びの部分。

今もそうですが、つらいことが多い私にとって、最後の一節は本当に涙が出るほど沁みました。
この本を読むと、自己への慢心や力みが消えて、心が洗われるような気持になります。

歎異抄入門するなら、絶対にこちらはオススメできる本です!文庫化されたこのタイミングで、ぜひ手に取ってみてください。