何かと話題の…
近年彗星のごとく現れた若き論客、成田悠輔さん。
テレビなどでもよくお顔を拝見する様になりました。天才と言われていますね。
発言内容を断片的に聞くに、論理的で冷静で革新的な印象があります。
私自身、普段から「政治は今のままでよいのだろうか?」と疑問に思いながらも、これだという解決策が見いだせずやきもきしていたところ、成田さんが民主主義のあり方について本を書かれているということで、なにかよいアイデアが得られればと思い、購入しました。
概要
世の中の根本を疑え
「22世紀の民主主義」成田悠輔、SB新書、SBクリエイティブ
断言する。若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは日本は何も変わらない。
これは冷笑ではない。もっと大事なことに目を向けようという呼びかけだ。何がもっと大事なのか? 選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール自体をどう作り変えるか考えることだ。ゲームのルールを変えること、つまり革命であるーー。
22世紀に向けて、読むと社会の見え方が変わる唯一無二の一冊。
成田 悠輔さん 来歴
夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想株式会社代表。専門は、データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、企業や自治体と共同研究・事業を行う。混沌とした表現スタイルを求めて、報道・討論・バラエティ・お笑いなど多様なテレビ・YouTube番組の企画や出演にも関わる。東京大学卒業(最優等卒業論文に与えられる大内兵衛賞受賞)、マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.取得。一橋大学客員准教授、スタンフォード大学客員助教授、東京大学招聘研究員、独立行政法人経済産業研究所客員研究員
「22世紀の民主主義」成田悠輔、SB新書、SBクリエイティブ
などを兼歴任。内閣総理大臣賞・オープンイノベーション大賞・MITテクノロジーレビューInnovators under 35 Japan・KDDI Foundation Award貢献賞など受賞。
構成・文体
本書の構成は、大きく分けて、
・まえがき(つかみ/要約/注意してほしいこと(言い訳、と筆者は書いています))
・本論(故障/闘争/逃走/構想)
となっています。
外国語の論文を書き慣れていらっしゃるので、まず最初に要約を持ってきてくれているのが、私としてはありがたかったですね。本論の理解の助けになります。
また、全体的に小段落ごとに1行あけて書いてくれており、見た目がみっちりしていないため、読みやすいです。さらに、説明についても図が入っていたり、比喩やユーモアを交えて書いてあるのでわかりやすかったです。読む人にとってわかりやすく、ということを意識されている感じがしましたので、とても好感が持てました。
あと、最近の本は、最初から強調したいところが太字やマーキングしてあるものが多く、読みやすいですよね。昔の本だとまずないので、賛否両論あるかもしれませんが、私は好きです。
つまり、どうするべきなのか? ※念のためネタバレ注意
成田さんはデータ・アルゴリズムの専門家ということですので、やはり民主主義への処方箋もアルゴリズムを活用した「無意識データ民主主義」であると主張しています。
「無意識データ民主主義」とは、パソコンの検索結果、日常の会話、心拍数など、普段無意識に表出している個人の意思をもとに、アルゴリズム(問題を解決するための手順をコンピューターのプログラムとして実行可能な計算手続きにしたもの)が最適解を出すようなシステムのことです。
確かに、現在の選挙システムでは、そもそも投票率が低い、また、仮に全員が投票したとしても人口比が均等でないため、最適解が出せるのかと考えると、疑問があります。
ですが、全員の意見を自動で吸い上げて最適解を出してくれるのであれば、これほど楽なことはありませんね。
課題と政策を出してくれるので、選挙という属人的な意思決定をする必要がないので、当選後にマニフェストを翻される、というようなガッカリ展開もありません。
課題と思われること
とても画期的なご提案だと思います。
ただ、素人目から見ますと、そもそもまず、国としてそういったシステムを採用する、ということをどうやって決定するのかが難しいと思いました。
理解が足りなかったら申し訳ないのですが、機械に全権委任してしまうということは、ちょっと怖い事ではあります。また、多少の誤りもあると思いますので、それを人為的に手を入れることも成田さんは容認していますが、そこを誰が、どの程度入れるのかについては相当に慎重にならないといけません。
また、そもそもそのシステムを管理する人間は誰なのか。技術者になろうかと思いますが、その人物が自身に有意なアルゴリズムを作ってしまったら…?など、解決すべき課題は多いような気がします。
感想
実現可能性については先が長いような気がしましたが、そもそも現代の政治体制に疑問を持ち、解決策の提案まで出してくれる方は、非常に少ないと感じています。
ですので、こういった一般の方にもわかりやすい語り口で、議論のきっかけを与えてくれたことは非常にありがたいことだと思います。
現在の選挙のかたちそのものが、果たして民意の反映に最適なツールになっているのか?という視点を自分も持って行きたいと思います。